へんなひとインタビューVol.6 古田和之というひと
- Minori Sunada
- 2015年8月4日
- 読了時間: 6分

古田 和之 Kazuyuki Furuta
つまようじ画家
NO-JIN(デザイン部門)
へんなひと? それともへんたい?
どっちでもいいよ! アートなら の巻
『水辺のマルシェ』の絵を描いてるひと。といえば、ピンとくる方も多いのではないでしょうか。
古田さんの絵は、なんだか楽しい夢を見ている最中のような気持ちにさせる、鮮やかな色使いが印象的。それでいて繊細でやさしい風合いも同時に感じるのは、ぜんぶつまようじで描かれてるからなんだって!
つ、つつつつまようじ。なんだって!
恥ずかしがり屋の古田さん、お顔の代わりにご自身の作品を・・。
もちろん、この絵もつまようじで描かれてるんです。
ちなみに、誰の似顔絵か聞くの忘れちゃったけど、古田さんはこういうお顔立ちではありませんでした。念のため。
アトリエにお邪魔して、アートへの思いを語っていただきました。
古田さんとアート
ー絵はいつから描いているのですか?
古田:中学生ぐらいからかな。昔から美術の授業は得意だったけど、高校生の頃から点描画にはまり出して。教室で、何枚も何枚も、ひたすら点の打ち方を研究してました。ある時、ふと目の前にあったつまようじを使ってみたところから、今のスタイルが出来たんです。
大学で京都へ行って7~8年住んだんだけど、2006年に向こうで開いたのが、初めての僕の個展でした。
最初はハガキサイズの絵だったのが、だんだん大きくなって。
個展を開くたびに人とのつながりが広がっていくところが、アートをやっていておもしろいところですね。他のアーティストや写真家の方とコラボしたりね。
ーNO-JINというグループで活動されてますが、発足のきっかけと活動内容はどんなものなんでしょうか
古田:京都から松本に帰って来て、蔵シック館で個展を開いたんですね。その時、たまたま今のNO-JINメンバーが遊びに来てくれたの。もともと地元が一緒で知ってる仲ではあったんだけど、10年ぶりぐらいの再会だったかな。果樹農家を継いで頑張りはじめたところで、長野の美味しい果物をもっと効果的にアピールしていけるようなグループを作りたいんだって話をしてくれたんです。りんごとかぶどうとか、特に若い世代のひとたちにとっては、どこか少し遠い存在だったりするでしょ。食べればこんなに美味しいのに、ふだん当たり前に食べてるひとって意外と少なくて。だから、この美味しいりんごなんかも、それこそ丸かじりするのが当たり前になったらいいのにっていう思いがあって。
それと、僕らからしたら、農業もアートもまったく同じなんです。
畑というキャンバスに、作物という作品を作っていく。究極のアートだと思うんです。だから、彼らの農業に僕のアートを足したらもっと良いってことで、デザイン部門を担当することになりました。NO-JINはそんなコンセプトで、活動しています。東京の青山のクラブでりんごを一個ずつ販売した時は、みんな踊りながらりんごを丸かじりしてくれて、すごくいい風景でした。
ー農業とアート。たしかに、何もないところから完成を目指してひとつひとつ作業を重ねていくという意味では、まったく同じですね。
古田:絵も、農業も、偶然こう仕上がったっていうことはない。それに、絶対に同じものは二つと出来ないじゃないですか。でも、絵は食べられないけど、作物は食べられるんですよ! すごくないですか?
僕の家は畑を持っていないんです。だから、農作業ってしたことがなかったんですね。NO-JINを始めた当初も、りんごや桃の絵を、実際に作ったこともないのに描いていた自分に疑問を感じて、今は積極的に畑仕事に出るようにしています。2~3年前ぐらいからかな。
休日、週に一度は必ず畑仕事をしているし、平日も早起きして、出勤前に畑に行きます。僕にとっては、絵を描くということと、畑で作物を作ることは全く同じことなんです。
つまようじという自己表現
ーどうして、つまようじにこだわるのですか?
古田:つまようじは、僕自身なんです!
高校生の時、ボールペンを使った点描画を描いていた頃、最初は点の打ち方もランダムだったんですね。ある時、点を重ならないように並べて打っていくことで絵の仕上がりが全然ちがうってことに気が付いたんです。ボールペンをつまようじに変えたらもっとおもしろかった。
点を打っていくごとに、先がつぶれていくでしょ。だから、今打つ点とその隣に打つ点は、もう全くの別ものなんですよ。この無数の、それぞれ全く違う点が一枚の絵を作っていくっていうのは、僕の中の無数の、全く違うひとつひとつの細胞が僕という人間を作っているのと同じこと。だから、僕の描くつまようじ画は、僕そのものなんです。
自己表現なんです。世界も同じ。僕という人間と、別の全く違う人と、無数の人たちで形成されて、同じ人間はどこにもいない。細胞の次元までさかのぼっても、宇宙の次元まで拡げて考えても、それって一貫した事実で。それを忘れなければ、戦争も争いも起きないと思うんだよね。
世界平和って遠いところの話じゃなくて、僕たちひとりひとりがそれを意識するところから全部始まるんじゃないかなって思います。
ー古田さんの絵はカラフルなものが多いと思っていましたが、アトリエにお邪魔してみて、白黒の絵もあるので意外でした。
古田:もとは白黒の方が好きかもしれません。色が派手になるのは、その反動というか。僕が絵を描きはじめる時って、出発時点ではゴールが見えてないことが多いんですね。たいがいやり過ぎちゃう。あぁ、ここ加えなければもっと良かったなってことがあります。止めどきが見極められるようになったら、画家としての成熟なのかなって考えてます。
僕の場合、何を描きたいっていうよりも、とにかくつまようじの点を打っていくというところの方が重要で。テーマは後からついてくる。
点を打つことそのものが、自己表現なんです。もう、変態ですよね。
ー松本でこんなに活躍されている古田さんですが、やはり故郷松本はお好きですか?
古田:京都の方が好きだけどね(笑)。僕、お寺とかが好きだから。
兄弟がみんな家を出ちゃったから松本に帰ってきたんだけど、せっかくなら今いる場所で楽しく暮らそうと思って、いろんな活動をしています。都会と違って、可能性をたくさん秘めてるところは、松本の良いところですよね。それに、松本に戻ってきたからこそNO-JINの活動も始められたから。今後もおもしろいことを、どんどんやっていこうと思っています!
ー最後に、今はまってるものを教えてください。
古田:多肉植物にはまってます。
松本アイスから古田和之さんへ
へんなひとは、やっぱり周りからへんだと言われつづけて育ったひとが多いようですが、古田さんもそのひとり。
ご自身、むしろ自分がへんじゃないと不安になるのだそう。
個性、個性とみんなが口を揃えて言う世の中で、ほんとのへんなひとは、個性的になろうなんて少しも考えていないみたい。
じっと、自分の中を、もっと奥を、探して探して、探しまくって発見した何かをとても大切に可愛がり、育ててる。
古田さんの学生時代からの膨大な作品の数々、今回見せていただいたのはほんの一部だけど、ものすごい数でした。
絵と、農と、つまようじ。
感性を光らせながらも、着実で地道な鍛錬と工夫の中で、より高い仕上がりへと向かっていく壮大な作業。とても感銘を受けました。
変態級のへんなひとは、つまようじを手に宇宙を探検してる、とってもロマンチックな常識人でした。
松本アイスはこれからも、古田和之さんのへんな松本暮らしを見つめつづけていきたいと思います。

重ねたクレヨンをつまようじで削る画法

つまようじで点を打つ画法

アトリエから見える外の景色

いとしい多肉植物
























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