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ずっと気になってたシリーズVol.1  中西屋という店

  • 執筆者の写真: Minori Sunada
    Minori Sunada
  • 2015年1月27日
  • 読了時間: 4分

中西屋本店

どんなにお金をかけても創れない価値ってある の巻

松本でいちばん、城下町の風情を感じられる「仲町通り」。

石畳の道がずーっと続いて、蔵造りの商店が並んでいて、観光客のひともよく歩いてる。

ちょっと待って!

レトロすぎる!

「中西屋本店」さんは、創業ひゃくなんじゅうねんか忘れた(店主)けど、とにかく老舗の酒屋さん。

ちょっと、道の反対側から覗いてみちゃお。

中が見える.JPG

むむ。

なにやらおじさんたちが、一杯やりながら井戸端会議しているぞ。

でもこの光景、通るたびに目にしているような・・・。

おじさんたち、いつもここで何しゃべってるんだろう。

エントランス.JPG

店内.JPG

おじゃましまーす。

んんん。

なんだか、いい感じに雑然としている。

あのおじさんたちの井戸端会議は、どうやら右手のスペースで開かれているようすですな。

定位置.JPG

かわいらしいお母さん。

このひとが店主でした!

五代目だって。

10年前にお父さんが亡くなってからは、ひとりでお店を切り盛りしてるんだって。

「昔はこのへんも酒屋だらけだったのよー。昔の酒屋は一杯飲みがあたりまえにできたんですよ」とのこと。

お父さんが元気だったころは、配達人さんも何人かいて大忙しだった。

今はのんびりと、どうやらそこが定位置らしい棚の隙間にお母さんはちょこんと納まって、気まぐれに訪れる常連さんに相槌をうったり。びっくりするような大物俳優さんが撮影や舞台を終えて立ち寄ったのをどぎまぎしながらお相手したり。

時には外国人観光客のひとが飲んでいくことも。

みんな、同じように外から中のようすを見て気になっちゃうみたい。

松本アイスも混ぜてもらいました。

ひとびと.JPG

ここでは時間が、まるで止まったみたいにゆっくりゆっくり流れていました。

みんな、毎日顔を突き合わせてるから、きっと、とりとめて話すこともないんだろうな。

誰かがしゃべって、みんなで頷く。

次に誰かがしゃべるまではずいぶん間が開くけど、その沈黙に誰も退屈なんて感じてないみたい。

ーお父さんたち、いつもここで何のお話しているの?

「そうね、まあ年金の話とか、病院の話とか、エッチな話とか」

ーみなさん、このご近所の方?

「そうだよ、みんなすぐ近くに住んでるよ。けど、根っからの松本人ばかりじゃないよ。俺なんか神奈川出身だし、隣のこのおじさんもよそから来てるよ」

ーいつも楽しそうに一杯やってるのを外から目にしてて、ずーっと気になってました。

「あんたがたも、いつだって飲みにくればいいじゃないか」

…なんて言っていると、一人、また一人とお客さんが現れる。

ーはじめまして。お父さんは、もうこのお店に通って長いんですか?

「そうね、母ちゃん。俺はここへ来ていったい何年目になる?」

「えー、知らないよぉ、あたしはひとのことなんてぇ」

店主の客あしらいがなんとも小気味の良い店。

なかには、とってもお喋りなひともいる。

誰かと話したかったら、いくらでも付き合ってくれるひとたちがいるし、誰とも話したくないけど一人でいたくない時には、いくらでも放っといてくれる。

この日、松本アイスが出会ったおじさんたちは、みんなとってもやさしいひとたちだった。

気さくに話しかけてくれたおじさんは、幽霊が見えちゃう。

寡黙にウィスキーを飲むおじさんは、実は低音で冗談をかます乙なひと。

「お金が家の玄関からあふれ出してドアが閉まらなくて困るからさ、資源ごみに出したけれどまだ半分も片付かないんだよ。だから来週また出さなくちゃ」

ーそれはまた、たいへんですね。

「ほんとにねぇ。どう? こんなもんでいいかな? 心、豊かになったでしょ?」

アルコールは何年も前に卒業したというおじさんは、缶コーヒーを片手にたばこの煙をくゆらせて、じーっと静かに病院の予約時間になるのを待っていた。

ほんとよりも二十は若く見えるこのおじさんは八十八歳。たばこで早死にするって通説がうそだって証明してた。

時間にしか作り出すことのできない価値ってあるけど、ここはお店自体もそうだし、集うひとびともそう。

ひゃくなんじゅうねんもこの街を見つづけてきたお店。

そしてなんじゅうねんも、数えきれない幸せや、失敗や、苦労や、人生を生きてきたひとたち。

ここにはバックミュージックも、お洒落な雑貨もないけど、あたたかい『年輪』がこのお店の居心地を作っている。

お母さんと、おじさんたちのやさしい笑顔皺に包まれながらの一杯も、なかなか貴重な時間かもね。

「もー、儲かんない。儲かんない」

お母さんは笑うけど。

どうか、末永くこの場所にあり続けてほしい。

看板.JPG

このいぶし銀の看板も、実は二代目。

昔はネオンのついた看板だったんだって。この界隈じゃ、どこよりも最初にネオンつき看板を出したお店だった。

ここでは紹介できなかったけど、お母さんの妹さんという隠れナイスキャラもいる。

 
 
 

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